虹色アゲハ
といっても。
実際は詐欺師である揚羽の方が、当然(まさ)っていたが…
例のごとく目立つのを避け、トップ3には入らないようにしていたのだ。


そうしてるうちに…
ナンバーワンと交替することになり、揚羽が席を立とうとすると。

思わずといった様子で、久保井に手首を掴まれる。


「あ…
また戻って来る?」

「…わからないわ。
私も指名が重なってるし」

手首の体温に、一瞬ドキリとしたものの。
すぐにそれは収まっていく…


「じゃあ電話番号教えとく。
もう健気に待たなくていいようにね」

それは柑愛から入手した、既に知っている番号だったが…
揚羽は久保井から、微かな焦りを感じた。


それにより…
この勝負は詐欺師とバレている久保井の方が、部が悪いと今さら気付く。

1人を除いて、誰も好きになれなかったのはお互い様で…
そういった人間が詐欺師に、ましてや親友(自分)を騙した男に惚れる可能性など極めて低く。
それが色恋に従事したホステスともなれば、なおさら難しいからだ。
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