虹色アゲハ
そうして揚羽は、依頼者に引き受けの連絡を入れると…
さっそくターゲットに接触した。


「これブランド物ですよね?
すみませんっ、弁償します」

不注意を装ってぶつかり、持っていたアイスコーヒーをターゲットにぶちまけたのだ。


「いえっ、そろそろクリーニングに出そうと思ってたし、僕も不注意だったんで気にしないで下さい」

「そんな訳にはいきません!
私が嫌なんです…
お金には余裕があるので、どうか弁償させて下さいっ」

揚羽は高級スーツを地味に着こなし、一流ブランドの腕時計やバックを身に付けながらも…
髪は1つに束ね、眼鏡と垢抜けないメイクで真面目な雰囲気を醸し出していた。


「…じゃあ、今度ご馳走して下さい。
さすがに弁償は僕が嫌なんで」

よし、食いついた。

大金を奪うには、それなりにターゲットの懐に入らなければならない。
美人局で奪うなら、立場のある表の顔に近づくところだが…
それ以外で親密になるには、裏の顔である結婚詐欺師の好物に扮するのが手っ取り早いと踏んだのだ。


ところが、連絡先を交換する際。
ターゲットが差し出したのは、表の顔の名刺だった。
< 15 / 268 >

この作品をシェア

pagetop