虹色アゲハ
だけど、そんな行為をして平常心を保てる自信はなく…
なにより付き合ってる以上、鷹巨を裏切るわけにはいかなくて。

どうする事も出来ない焦燥感と、切り捨てられたダメージに翻弄され…
それを拭い去るように、揚羽は鷹巨との甘い時間に溺れていった。



「俺の事、ちょっとくらいは好き?」

日に日に感度を増す揚羽に、行為の最中尋ねる鷹巨。

「わから、ないっ…」
嬌声混じりにそう返す。


「好きか嫌いだったら?」

「好き、よっ…」

「もいっかい…
俺の名前と一緒に言って?」

そのリクエストと同時、弱い所を攻められて…

「ああっ…!
好きっ…好きよ、鷹巨っ……」

「んっ…
俺も好きだよ、愛してる」
そう囁いて、口内も埋め尽くすと。

2人してすぐに絶頂を迎えた。


揚羽にとって、鷹巨だけが甘えられる存在で…
その体温に安らいで…
抱かれると充足感に包まれて…
心を癒すオアシスのようになっていたのだ。

それだけじゃなく。
家族の愛を失い、唯一の愛する人にまで裏切られた揚羽は…
愛を信じられなくなり、それとは無縁に生きてきたため。
本当は誰よりも愛に飢えていて…
鷹巨の愛を受け入れずにはいられなかったのだ。
< 168 / 268 >

この作品をシェア

pagetop