虹色アゲハ
「…その結果騙されたくせに?」

「あの時(元カノ)はっ…
別に結婚とか考えてなかったから、色々気にしてなかっただけだし…
仮に騙されても、聡子ならいいよ?」

「っ、お断りよ。
あんたみたいなバカ、騙す価値もないし…
もう付き合い切れないわ」
顔を背けて、そう別れを突き付けると。

小さく震えてるその身体を、鷹巨は優しく抱きしめた。


「じゃあなんで泣くの?
…それに、気付いてる?
断る理由が、俺を気遣う事ばっかで…
俺じゃダメって事は、一つも言ってないって」

「もぉうるさいっ…
とにかく、無理なもんは無理だからっ」

「そんな理由じゃ諦められないし、別れもOK出来ないよ」
くすくすと笑う鷹巨。


涙のわけは、揚羽自身もわからないでいた。
だけど、鷹巨の気持ちが嬉しくてたまらなかったのは確かだった。

そして、一瞬夢を見てしまった…
こんな自分でも、普通の幸せが手に入るんじゃないかと。

この復讐の渦から、汚れきった自分から…
脱皮して、もう一度生まれ変われるんじゃないかと。

そのため、はっきり断れなかったのだ。


そんな揚羽を抱きしめながら…
鷹巨はずっと、その髪を撫で続けていた。



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