虹色アゲハ
「もう何やってんのよ」
ついまた拭こうとしたが…

「自分でやるからいいって!」


「…でも取れてないわよ?」
ふふっと笑いながら、親指でその唇のソースを拭うと。

「だからやめろよ!」
感情を押し殺すのに精一杯だった倫太郎は、バシンと強く払い退けてしまう。


「あ、わり…」

「ううん、そうだったわね。
けど、あんたってどこまでも私の事拒否るわよね」

「別に拒否ってねぇよ…潔癖症?」

「部屋こんななのに?」

いつも大雑把に掃除されていて、お世話にも綺麗とは言えなかった。


「っせーな。
つかプロポーズってなんだよ。
オマエらまだ付き合って1ヶ月くらいだろっ。
しかもあいつ一般人だろ?」

「そこなのよ。
一般人が、それもあんな完璧なエリートが…
こんな犯罪者にプロポーズするなんて、考えられる?」

「…なんか裏がありそうだな」

「そっち!?
じゃなくて、そこまで愛してくれるなんて凄くない?って話よ」

すると、呆れた顔を向ける倫太郎。


「なによ?」

「いやそれ、まんま結婚詐欺の手口だろ。
やたら良いヤツ演じて、短期勝負で尽くして、こんなに愛されてると思わせて…
なにどっぷり術中にハマってんだよ」
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