虹色アゲハ
‪その言葉と切実な声に…
また胸を掴まれそうになった揚羽は、カチンと苛立つ。

「いいかげんにして!
あんたなんかに愛を語る資格はないわ」

それを喰いものにしてきた分際で!


『…俺にだって愛はあるよ。
誰にも負けないくらいの愛が。
ずっとずっと、ただ1人だけ…

死ぬほど愛してるよ、(のぞみ)


その瞬間、揚羽の心が破裂する。



それは、とっくに捨てた本名で…
11年ぶりに耳にした呼び方で…
再び呼んだのは、最後に呼んだその人で…

まるで羽化するように。
揚羽の皮を破って、死んだも同然だった「望」の心が甦る。



「気づい、てたの…?」

『…うん、最初から。
気づかないわけない。
忘れるわけない。
今日までずっと、ほんの一瞬だって忘れた事なんかなかったよ』

途端、ぶわりと涙が堰を切る。


「じゃあどおしてっ…」

『言えるわけないだろっ。
あんな目に合わせといて…
なのに会いたくて、近付きたくてっ。
今だって!
本当は関わらせたくなかったのに…
最後にもう一度だけ、会いたくて。
きっともう二度と、会えないだろうから』
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