虹色アゲハ
【2】ーー…


「ずっと思ってたんだけど、この匂い大好き」

少年の胸に抱かれ、少女はそれを幸せそうに吸い込む。


「え、どんな匂い?」

「ん〜、なんか甘い匂い」

「なんだろ、何も付けてないけど…
フェロモン?」
少年が猫みたいな目を細めて、そう(おど)けると。

「だから吸い寄せられちゃうんだっ?」
話に乗っかって、(じゃ)れるように唇を重ねる少女。

途端、ローソファに横たわってた2人は、バランスを崩して落ちてしまう。

だけど少年が、くしゃっと八重歯を覗かせて笑い飛ばすと。
少女もぷはっと吹き出して、どちらからともなく再び唇を重ね合った。



「あぁ、帰りたくないなぁ…」

「でも帰んないとヤバいだろ」


そうして、廃ビルの地下にある秘密基地から表に出ると…

夕空に架かった大きな虹が、視界に飛び込む。


「ねぇ知ってた?
虹は希望の象徴なんだって」

「ふぅん、じゃあ知ってた?
俺らの名前が希望になるって」

すると2人はふふっと笑い合う。


「じゃあ一緒なら、この辛い雨も乗り越えられるよね?」

「うん、いつか俺が虹の向こうに連れてくよ(●●●●●●●●●●●)

そして今度はあははと笑い合った。



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