虹色アゲハ
仁希はヘタレだと挑発しながらも、枷の一つを外そうと…
倫太郎の代わりに守っていた女が結婚する事を告げると。

「…そっか」と肩の荷が下りる倫太郎。


「俺も目的を果たしたし、お互い任務完了だな。
だからもう、望に手を出すのも自由だ」

「はっ?
アイツの気持ち考えろよっ」

「それなら大丈夫だ」

「わけねぇだろ!
どんだけ傷ついてたと思ってんだよっ。
部屋なんかメチャクチャで、生きる気力なくしてたし。
メシだって食えなかったし、ヤケになってるし」

すると仁希は思わず固まって。
「そんなにっ?」と吹き出した。


「…やめろよ。
ほんとは誰より傷ついてるくせに」

その途端、仁希の感情が溢れ出す。

ずっと仁希の本音と接してきた倫太郎は、それを見抜く事ができ。
仁希も、そんな唯一本音でぶつかれる存在だからこそ、感情の(たが)が外れてしまったのだ。


「ふっ……くっっ………」
必死に口元も抑えるも。

望ごめん、ほんとにごめんっ…
望は俺に、生きる希望をくれたのに。
あんなも幸せをくれたのにっ。
俺は最初から最後まで傷つける事しか出来なくて、ごめんっ。
ごめんっっ…

心の叫びに併せて、あの夜と同じようにポタポタと涙が落ちる。
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