虹色アゲハ
望は、そういう事かと…
その時の状態や倫太郎の家がバレてた理由、そして「逃げよう!」という言葉に合点がいく。


「でも中の状況がわからないと、下手に動けないし。
他には相談出来ないし…」

そう、中に複数いた場合、返り討ちにあうだけで。
望が詐欺師のため、警察にも相談出来なかったのだ。


「だからしばらく、仕事の時は興信所も使って見張ってたんだ。
でも出入りはあの彼だけだったし。
聡子は全然出て来なかったから、監禁されてるんだと思って…
どんな事をしても助けなきゃって」

とはいえ。
足を刺す程度では、力量差的に鍵を奪える自信はなく。
たとえ奪えても、仲間を呼ばれる前に助け出すのは困難だと考え。
聡子が出て来るのを待って、今回の事に及んだのだった。


「だけどごめん…
彼は聡子の、大事な人だったんだろ?」
俺なんかより、ずっと…

それはあの時の2人を見れば一目瞭然で。

悲しそうに問いかける鷹巨に、胸を抉られながらも…
望はしっかりと頷いた。


「彼は私にとって、唯一の…
家族みたいな存在なの」

同じく倫太郎にとっても、この上なくそうだった。
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