虹色アゲハ
互いに怒ったり、本気で心配したり。
気まずくなっても自然と歩み寄って、信頼し合って。
心を許せる、大切なかけがえのない存在だったのだ。


「唯一…」
鷹巨は色んな思いを巡らせて。

「そんな大事な存在に、俺っ…」
苦しげに言葉を詰まらせて、涙ぐむ。


「ううん、私があんな(組織の)嘘ついたからっ…
鷹巨の人生まで狂わせてしまって」

「俺はいいよっ。
むしろ俺のせいで、俺がやめてほしいって頼んだせいで、酷い目にあってると思ってたから…
聡子が無事なら、俺の人生なんかいくらでも狂っていいよ」

その言葉に、ぐわりと涙が込み上げる。

「やめてよっ!
私は鷹巨を裏切ったのよっ?」


「…だとしても、悪意のある裏切りじゃないよ。
だって、手切れ金は返してくれてた」

鷹巨は当時。
男が外出した隙に、聡子が捨て身で返してくれたと思い。
いっそう、人生を棒に振っても助けようと決意したのだった。


「それが何っ!?
悪意があるから、後ろめたいから返したとしたらっ?」

「…それでも俺は、聡子を信じてるし。
それで自分がどうなろうと、後悔しないよ」

「どうしてっ…
どうしてそこまで!」
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