虹色アゲハ
途端、バクバクいってる胸の音が今さら恥ずかしくなった倫太郎は…

「飲み過ぎだろっ。
水持ってくるからソファ座ってろよ」
バッと揚羽を引き離して、キッチンに向かった。


私、なにやってんだろ…

取り残された揚羽は、酔いながらも我に返って。
急に恥ずかしくなったと同時、倫太郎の拒絶にショックを受ける。


「ねぇタクシー呼んで。
店に忘れ物したみたい」
いたたまれなくなって…
だけどこんな気持ちのまま家に1人でいられなくて、そう嘘をついた。

本当はすぐにでも飛び出して行きたかったが…
そんな事をしたら、心配して追っかけてくるに決まってて。
余計惨めなうえに、GPSを切るのも不自然なため、そんな嘘をつくしかなかったのだ。


「は?
だったら送ってやるよ」

「今さら心配?
やめてよ、誰かに見られたらどうすんの」

そう、どこで情報が漏れるとも限らない。
赤詐欺を狙う以上、男の影を匂わすわけにはいかないのだ。


そうして、タクシーを店のビルまで走らせると。
そこから近くにある公園に、ふらふら足を伸ばして…
ベンチに腰を下ろした。
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