虹色アゲハ
「泣いてください。
僕がこうやって隠しとくんで…
でも1つだけ。
僕はこんな素敵な人が隣にいたら、それだけで。
たとえ会話が弾まなくても、どんなミスがあったとしても…
来たよかったなぁって思います」

そう言って、揚羽の頭を優しく撫でた。


さすが詐欺師…
上手く懐に入り込んでくる。
私の話が事実だったら、このフォローはさぞかし嬉しかっただろう…

そう思いながらも、今の揚羽には有り難い温もりだった。


嘘でいい、嘘がいい。
どうせ全てのものが、いつどうなるか分からない幻なんだから…

しかもこのまま甘えれば、こっちも懐に入るのに好都合だと。
揚羽はその胸を吐け口に利用して、ぎゅっと抱きついて泣き濡れた。


そんな2人を…

やっぱり心配で様子を見に来た倫太郎は、車から眺め。
何も出来ない自分に胸を痛めながら、悔しさにきつく拳を握りしめていた。



「あの、もう大丈夫です。
ありがとうございました。
おかげで胸のつかえが取れました」

「…なら、良かったです」


そこで揚羽は気になっていた事を切り出した。
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