虹色アゲハ
「でも、よく私だと気付きましたね?
自分でも別人みたいだと思っていたのに…」

パッと見で同一人物だと見極めるのは困難で、今まで見破られた事などなかったのだ。


「はい。営業の仕事がらか、相手の特徴を捉えるのが得意なんです」

「すごいですね。
それよりすみません、明日も早くからお仕事ですよね?
なのに私まで帰りを遅くしてしまって…」

「いえ僕は、少しでも聡子さんの役に立てたならそれだけで。
だだ、我儘を言わせてもらうなら…
今度、遊園地デートしてもらえませんか?」

「遊園地っ、ですか?」

何考えてんの?
多忙なはずなのに、そんな一日中使って…

表の顔で詐欺をするとは思えなかったが、するならするで回りくどい手口だと怪訝に思う。
何より、揚羽自身が手っ取り早く終わらせたかった。


だけど…

「はい、喜んで。
楽しみにしています」


嘘の優しさでも詐欺の手口でも、受け止めてもらった事で気持ちを切り替える事が出来たため。
付き合ってやるかと、乗る事にして…
そこで一気に距離を縮めようと謀ったのだった。



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