虹色アゲハ
「これ以上心配かけたくなかったら、大人しくそこで待ってて」
そう言って電話を切った。


一緒に居るところを誰かに見られるワケにはいかなかったが…
それどころか、鷹巨に見られる可能性も高かったが…

そんな事より。
倫太郎が素直に病院に行くとも思えず、運転も危ないと判断しての行動だった。



案の定。
倫太郎は顔色が悪く、痛みと熱で発汗も伴っていて…
すぐに車を近くの駐車場に移動させ、タクシーで病院に連行すると。

穿孔性虫垂炎と診断され、緊急手術をする事になった。




「まったく…
腹膜炎のギリギリ手前だったんだからね?」

「そんな事より…
足引っ張って、ごめん」

「はあ?
むしろそんな事より、心配かけてごめんでしょ?」

「……ん。
心配かけて、ごめん…」
いつになくしおらしい倫太郎に…

揚羽は胸をきゅうっとくすぐられて、ふふっと笑う。


「…なんだよ」

「ううん、無事に手術が終わってよかった。
あ、そうだ。
何かと便利だから、私は姉って設定にしてるから」

「…ふぅん」
途端、拗ねた様子で顔を背ける倫太郎。
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