虹色アゲハ
数日後。

倫太郎の病室に向かっていた揚羽が、そのフロアのデイルーム前を通りかかると…
自動販売機の前で戸惑っている、車椅子の婦人が目に入る。


「手伝いますよ?」
「あらあら、ありがとねぇ」

母さんが生きてたら、同じ(年齢)くらいだろうか…
そう感傷的になりながら、飲み物を買う補助をしていると。

他の患者さんの会話が耳に届く。


「でしょ!?
もうイケメンだし背も高いし男らしいし、あとクールだし!
個室にこもってるからなかなか会えないんだけどね〜」

「それ!だから看護婦さんとか用もないのに入り浸ってるよねっ?
担当じゃない人まで部屋に入ってくの見たし」


そのクールな男って、この男の事だろうか…

補助を終えて、その病室を訪れた揚羽は大きく溜息をついた。


「だからもう平気だっつってんだろ!
いいから退院させろよっ」
担当医に食ってかかる倫太郎。

これのどこがクールって?


「でも君の場合は、」
「自分の体は自分が一番っ」

「いい加減にしなさい?倫太郎。
あんたは開腹してるからまだ無理なの!」

途端、静まり返る病室。
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