虹色アゲハ
詐欺師は基本、スピード勝負だ。
怪しまれる前に、ボロが出る前に、相手が冷静になる前に、決着を付けなければならない。

にもかかわらず、さっきした電話でも…
「僕は気長に待ってるんで、しばらくは親御さんの側にいてあげてください。
あ、でも僕の事忘れないでくださいねっ」
といった調子で。

どこまで間抜けなの?
それとも何かの手口なの?
と、揚羽は相手の出方を待つ事にしたのだ。


「ふぅん…
じゃあ俺も別の手段で探り入れとく」

「別の手段って?」

「……色々?」

「なにそれ…
まぁ無理はしないでよ?」



それから少しして、病院を出た揚羽は…
ふと思い付いて、盗聴器をオンにした。

入院中はそれを聴かないと思ったし、ゆっくり休んで欲しかったため。
鷹巨との電話では、敢えてオンにしなかったが…

「これ、独り言だから」
思わず呟いた。


「いつもありがと…
頼りにしてる」

足手まといなんかじゃないと示す、フォローを零した揚羽は…

途端照れくさくなって。
聴いてませんようにと、片手で顔を覆って項垂れた。


盗聴器の音声キャッチ通知を受けた倫太郎は、それを怪訝に再生して…
驚いたあと、泣きそうに顔を歪めた。



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