虹色アゲハ
「あの女何考えてるのっ?
美人局には絶好のチャンスだったのに、2度も棒に振るなんて…
鷹巨、なんかボロ出したんじゃないの?」

「いや、大丈夫だと思うけど…」

「だったらなんでっ…
手口変えたのかしら?」


「本当に親御さんの体調が悪いんじゃ?」

「そんな事で延期するっ?
医者じゃあるまいし、側にいたってどうなるもんでもないでしょ」

「そうだけど、そんな事って…」


鷹巨は、駅で待ち合わせした日の事を思い返した。

詐欺師が自分の立場を悪くしてまで、注目を浴びてまで…
誰かに任せればいい相手を、ほっとけずに助けようとするなんて。
まさしく、医者でもなければ自分の力でどうなるわけでもないのにと。

しかも遅刻の理由でそれを話せば、ターゲットの心を掴むのに有利なはずなのに…
夜の街で目にした美貌だって、そっちのほうが美人局には効果的なはずなのにと。


あの夜、偶然通りかかった鷹巨は…
慰めたのも遊園地に誘ったのも、元気付けて関係を発展させるためではあったものの。
聡子の涙は嘘には見えなかったし、遊園地デートも実際楽しかったのだ。
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