つらい日々を支えてくれたのは課長でした【優秀作品】
悪い知らせ
クランクアップから、ひと月後、課長と外回りに行き、直帰することになった。
「三沢、飯食ってこ」
「おごりですか?」
私は即座に尋ねる。
「お前は全く……
しょうがねぇから、おごってやるよ」
呆れたように答えた課長は、ツンと私の額を突っつく。
「へへへ。ごちそうさまです!」
私は、ご機嫌で課長の後ろをついて行く。
課長が連れてきてくれたのは、こじんまりとした小料理屋。課長に続いてのれんをくぐり、カウンター席に着いた課長の隣に座る。
「とりあえず、瓶ビール」
課長は女将さんに声を掛け、差し出されたおしぼりを手に取る。
「三沢、何食いたい?」
課長がメニューを見せてくれる。
「じゃあ、揚げ出し豆腐」
私が答えると、課長はメニューを片付けながら注文する。
「ん。女将、揚げ出しともつ煮、それから、
ぶり大根、肉じゃが」
女将さんは、微笑んで返事をすると、手際よくお料理を次々に出してくれる。
私たちは、乾杯をし、そのおいしいお料理をいただきながら、他愛もないおしゃべりをする。真島課長はとても気さくで、話しやすい。だから、私もつい、どうでもいいことまで話し過ぎてしまう。
しばらくして課長は、ふいに真面目な顔に戻った。
「三沢、もう知ってるかもしれないが……」
何?
「藤枝が帰ってくる」
私は、箸で豆腐を掴んだまま、固まってしまった。
「…………いつ……ですか?」
それだけ聞くのが、やっとだ。
「来月、頭。あと2週間くらいだ。大丈夫か?」
大丈夫じゃないけど、大丈夫かと聞かれて、大丈夫じゃないとは言えない。
「はい、大丈夫です」
私は、自らの気持ちを奮い立たせるように顔を上げた。
うん、大丈夫、大丈夫、大丈夫。
呪文のように自分にいい聞かせる。
「三沢、飯食ってこ」
「おごりですか?」
私は即座に尋ねる。
「お前は全く……
しょうがねぇから、おごってやるよ」
呆れたように答えた課長は、ツンと私の額を突っつく。
「へへへ。ごちそうさまです!」
私は、ご機嫌で課長の後ろをついて行く。
課長が連れてきてくれたのは、こじんまりとした小料理屋。課長に続いてのれんをくぐり、カウンター席に着いた課長の隣に座る。
「とりあえず、瓶ビール」
課長は女将さんに声を掛け、差し出されたおしぼりを手に取る。
「三沢、何食いたい?」
課長がメニューを見せてくれる。
「じゃあ、揚げ出し豆腐」
私が答えると、課長はメニューを片付けながら注文する。
「ん。女将、揚げ出しともつ煮、それから、
ぶり大根、肉じゃが」
女将さんは、微笑んで返事をすると、手際よくお料理を次々に出してくれる。
私たちは、乾杯をし、そのおいしいお料理をいただきながら、他愛もないおしゃべりをする。真島課長はとても気さくで、話しやすい。だから、私もつい、どうでもいいことまで話し過ぎてしまう。
しばらくして課長は、ふいに真面目な顔に戻った。
「三沢、もう知ってるかもしれないが……」
何?
「藤枝が帰ってくる」
私は、箸で豆腐を掴んだまま、固まってしまった。
「…………いつ……ですか?」
それだけ聞くのが、やっとだ。
「来月、頭。あと2週間くらいだ。大丈夫か?」
大丈夫じゃないけど、大丈夫かと聞かれて、大丈夫じゃないとは言えない。
「はい、大丈夫です」
私は、自らの気持ちを奮い立たせるように顔を上げた。
うん、大丈夫、大丈夫、大丈夫。
呪文のように自分にいい聞かせる。