つらい日々を支えてくれたのは課長でした【優秀作品】
2週間後、大河は本当に帰ってきた。せめてもの救いは、大河はマーケティング部所属で、私とは直接の接点がないこと。
だけど、社食へ行く勇気はない。あることないこと、ひそひそ言われるのはもうたくさん。私は、12時になると同時に、財布を持って立ち上がった。
今日はコンビニ弁当にしよ。
すると、後ろから声が掛かる。
「三沢!」
「はい!」
私は、その場で振り返る。
「飯行くぞ。待ってろ」
課長は言うだけ言って、視線は手元のノートパソコンから外さない。
えっ?
何で?
今までも、仕事の流れで一緒に食事をしたことは何度もある。だけど、一緒に仕事をしてない日に呼び止められるのは、2年前以来。
「……はい」
私は、素直に従った。他の同僚たちが、次々に昼食に出て行く中、私は、課長の仕事のきりがつくのを待った。
3分後、課長は、「よし!」とノートパソコンの画面を閉じた。
「悪い、待たせたな」
課長は、机の片隅に畳んで置かれた上着のポケットから財布を取り出すと、スタスタと長い足で歩いてくる。
「あの、どこへ?」
わざわざ、呼び止めたんだもん。
どこか行きたいお店があるんだよね。
「ん? 社食に決まってるだろ」
えっ……
「今日は、三沢ひとりじゃ、入りづらいだろ。
今日逃げたら、明日も行けないからな」
課長は、何でこんなに私の考えることが分かるんだろう。
私は、課長に促されるまま、課長の一歩後ろをついて行く。
「三沢は何にする?」
ランチの見本の隣にある券売機の前で課長が尋ねる。今日のAランチは豚の生姜焼き、Bランチは鯖の味噌煮。
うーん……
「じゃ、Aにします」
私が答えると、
「奇遇だな。俺もだ」
と課長は食券を2枚買う。
「えっ、課長!
私、今日、小銭持ってません」
別々で買えば、お釣りが出てくるのに。
「バカ。今日はおごってやるよ。
俺が無理やり連れてきたんだしな」
課長は笑って食券を1枚差し出した。
「あ、ありがとうございます」
私はその食券を受け取ろうと手を出すけど、課長は手を離さない。不思議に思い、顔を上げると、課長は言った。
「その代わり、明日から逃げるなよ。
今日から1週間、俺が社内にいる日は俺と
ランチだからな」
「……はい」
課長、一緒にいてくれるんだ。
それなら、頑張れるかも。
だけど、社食へ行く勇気はない。あることないこと、ひそひそ言われるのはもうたくさん。私は、12時になると同時に、財布を持って立ち上がった。
今日はコンビニ弁当にしよ。
すると、後ろから声が掛かる。
「三沢!」
「はい!」
私は、その場で振り返る。
「飯行くぞ。待ってろ」
課長は言うだけ言って、視線は手元のノートパソコンから外さない。
えっ?
何で?
今までも、仕事の流れで一緒に食事をしたことは何度もある。だけど、一緒に仕事をしてない日に呼び止められるのは、2年前以来。
「……はい」
私は、素直に従った。他の同僚たちが、次々に昼食に出て行く中、私は、課長の仕事のきりがつくのを待った。
3分後、課長は、「よし!」とノートパソコンの画面を閉じた。
「悪い、待たせたな」
課長は、机の片隅に畳んで置かれた上着のポケットから財布を取り出すと、スタスタと長い足で歩いてくる。
「あの、どこへ?」
わざわざ、呼び止めたんだもん。
どこか行きたいお店があるんだよね。
「ん? 社食に決まってるだろ」
えっ……
「今日は、三沢ひとりじゃ、入りづらいだろ。
今日逃げたら、明日も行けないからな」
課長は、何でこんなに私の考えることが分かるんだろう。
私は、課長に促されるまま、課長の一歩後ろをついて行く。
「三沢は何にする?」
ランチの見本の隣にある券売機の前で課長が尋ねる。今日のAランチは豚の生姜焼き、Bランチは鯖の味噌煮。
うーん……
「じゃ、Aにします」
私が答えると、
「奇遇だな。俺もだ」
と課長は食券を2枚買う。
「えっ、課長!
私、今日、小銭持ってません」
別々で買えば、お釣りが出てくるのに。
「バカ。今日はおごってやるよ。
俺が無理やり連れてきたんだしな」
課長は笑って食券を1枚差し出した。
「あ、ありがとうございます」
私はその食券を受け取ろうと手を出すけど、課長は手を離さない。不思議に思い、顔を上げると、課長は言った。
「その代わり、明日から逃げるなよ。
今日から1週間、俺が社内にいる日は俺と
ランチだからな」
「……はい」
課長、一緒にいてくれるんだ。
それなら、頑張れるかも。