策士な御曹司は真摯に愛を乞う
その日、夏芽さんはうちの社長とランチミーティングの予定を入れていて、私は何十時間ぶり?と思うほど久々に、彼と別々の時間を過ごすことになった。
自分でも『軟禁』と口走ったし、夏芽さん自身もそれを認めた。
囚われのお姫様とか、囲い込みとか……私の現状を知る人たちからも、そんな風に言われる始末――。
大袈裟だけど、解放感で満ち溢れる。
とは言え。
『いいか? オフィスから出るな。昼は社食で済ませてくれ』
今朝、多香子さんが来ていたせいか、それとも湊さんとの会話のせいか……。
より一層警戒心を強めた夏芽さんに、念を押すように言われてしまい、このビルから出られない。
私は、秘書室に異動する前に在籍していた営業企画部の同期、峰倉杏奈に声をかけた。
彼女は美味しいレストラン巡りが趣味で、もっぱら外食派だけど、今日は珍しくお弁当持参とのことで、十二時半に社食前で落ち合うことができた。
私がハンバーグ定食のトレーを持って、先に席を取ってくれていた彼女の前に座ると、
「美雨がお弁当じゃないって、珍しいね」
そう言ってクスクス笑いながら、お弁当の包みを開き出した。
私もつられて笑いながら、「そっちこそ」と応じる。
自分でも『軟禁』と口走ったし、夏芽さん自身もそれを認めた。
囚われのお姫様とか、囲い込みとか……私の現状を知る人たちからも、そんな風に言われる始末――。
大袈裟だけど、解放感で満ち溢れる。
とは言え。
『いいか? オフィスから出るな。昼は社食で済ませてくれ』
今朝、多香子さんが来ていたせいか、それとも湊さんとの会話のせいか……。
より一層警戒心を強めた夏芽さんに、念を押すように言われてしまい、このビルから出られない。
私は、秘書室に異動する前に在籍していた営業企画部の同期、峰倉杏奈に声をかけた。
彼女は美味しいレストラン巡りが趣味で、もっぱら外食派だけど、今日は珍しくお弁当持参とのことで、十二時半に社食前で落ち合うことができた。
私がハンバーグ定食のトレーを持って、先に席を取ってくれていた彼女の前に座ると、
「美雨がお弁当じゃないって、珍しいね」
そう言ってクスクス笑いながら、お弁当の包みを開き出した。
私もつられて笑いながら、「そっちこそ」と応じる。