策士な御曹司は真摯に愛を乞う
「っ……」
せっかく堪えた涙が、せり上がってくる。
「どうして……そんなに」
そんなに、私のことを――。
嗚咽が漏れるのを堪え切れず、両手で顔を隠した。
手に阻まれて、私の声はちゃんと音にならなかったのかもしれない。
夏芽さんは、なにも言わない。
ただ、真摯に誠実に向けてくれた告白に、私が返事するのを待っている。
――まだほんの十日ほど前まで、私は、彼に応えられなかった。
彼が私にどんな全力を見せてくれたか、思い出せないままだけど。
今の告白だけで、十分心は揺さぶられた。
『ここから改めて俺を好きになって』
ここからなら、忘れたままでも、ちゃんと応えられる。
「あり、がとう、ございます。夏芽さん」
無様とわかっている泣き顔も、隠さない。
喉に声を詰まらせながら、私は顔から両手を離した。
運転中の夏芽さんがまっすぐ前を見たままでも、視界の端に映してもらえるように、しっかりと彼の方に顔を向ける。
「私から、お願いします。私を、夏芽さんの恋人にしてください」
ブサイクな泣き笑いになっても、必死に微笑んでみせた。
夏芽さんが、小さく息をのんだ。
それを隠そうとしてか、大きな手を口元に持っていく。
だけど、優しく目尻を下げて――。
「ああ~……ヤバい。ニヤける」
ボソッと、一言呟いた。
せっかく堪えた涙が、せり上がってくる。
「どうして……そんなに」
そんなに、私のことを――。
嗚咽が漏れるのを堪え切れず、両手で顔を隠した。
手に阻まれて、私の声はちゃんと音にならなかったのかもしれない。
夏芽さんは、なにも言わない。
ただ、真摯に誠実に向けてくれた告白に、私が返事するのを待っている。
――まだほんの十日ほど前まで、私は、彼に応えられなかった。
彼が私にどんな全力を見せてくれたか、思い出せないままだけど。
今の告白だけで、十分心は揺さぶられた。
『ここから改めて俺を好きになって』
ここからなら、忘れたままでも、ちゃんと応えられる。
「あり、がとう、ございます。夏芽さん」
無様とわかっている泣き顔も、隠さない。
喉に声を詰まらせながら、私は顔から両手を離した。
運転中の夏芽さんがまっすぐ前を見たままでも、視界の端に映してもらえるように、しっかりと彼の方に顔を向ける。
「私から、お願いします。私を、夏芽さんの恋人にしてください」
ブサイクな泣き笑いになっても、必死に微笑んでみせた。
夏芽さんが、小さく息をのんだ。
それを隠そうとしてか、大きな手を口元に持っていく。
だけど、優しく目尻を下げて――。
「ああ~……ヤバい。ニヤける」
ボソッと、一言呟いた。