策士な御曹司は真摯に愛を乞う
恋人になって以来、私が自室として使わせてもらっている、客間のベッドで眠ることはなくなった。
もちろん、夏芽さんから、『これからは、毎晩俺のベッドにおいで』と、お誘い……いや、有無を言わせぬ命令があってのこと。


彼はだいたい日付が変わる頃まで仕事をしていて、ベッドに入るのは十二時半くらい。
私は先に休ませてもらってるけど、彼は私が寝てるかどうか確認しながら、後ろから抱きしめてくる。
今みたいに反応を返してしまうと、早速胸元に手を挿し込んできて……。


「あ、んっ……! 夏芽さんっ」

「明日、休みだし。……シよ?」


耳を唇で甘噛みしながら、しっとりとした艶めいた声で誘惑する。
一応私の意思を確認するような言い方だけど、拒否権を行使できたことはない。
と言うか、私が胸と耳が弱いことを知り尽くしていて、真っ先に攻め込む夏芽さんは、絶対策士だ。
抵抗どころか、最初から甘い感覚に痺れて、身体が戦慄いてしまう。


「や、夏芽……」

「美雨、こっち向いて。キスしたい」

「ん、んんっ……」


肩越しに覗き込むようにキスされながら、弱く敏感なところを捏ねられたら堪らない。
こうして私は、ほとんど無抵抗のまま彼の手に暴かれ、淫らでいやらしい女にされてしまうのだ。


本当は、夏目さんが私に『教えたくないこと』がなんなのか聞き出したいのに、彼に愛される今の幸せ以外、他のことはどうでもよくなってしまう――。
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