策士な御曹司は真摯に愛を乞う
翌日の土曜日、私は退院してから初めての受診予約をしていて、ほぼ二週間ぶりに病院を訪れた。
会社の行き帰りと同様、夏芽さんは私を一人にしたがらない。
休日でも、自分は本社に出向く用があるのに、わざわざ私を病院まで送り届けてくれた。


だけど、診察の間は周りにたくさんの患者さんがいるし、私を一人にしても問題ないと判断したのだろう。
『終わる頃、迎えに来る』と、オフィスに出向いていった。


ここは、都内でも有数の大病院だ。
受付後、いろいろな検査を受けて、診察はその結果が出るのを待ってからだし、予約してあっても待ち時間は長くなる。
結局、精算を終えるまでで、トータル二時間かかった。


でも、夏芽さんは『三時間くらいだろ』と、もっと長くかかると読んでいたから、きっとまだ来ない。
相変わらずうちの会社でリモートワークを続けているから、本来のオフィスでやるべきこともたくさんあるだろう。


『早く済んだら連絡しろ』と言われたけど、仕事の邪魔をしたくない。
連絡はせず、彼が来るのを待つことにした。


二月も終わりが近い。
早春のこの季節、今日は少し暖かくて、春めいている。
外来棟に面した中庭には、うららかな柔らかい陽が射していて、とても気持ちがよさそうだ。
時間を持て余した私は、外に出てみた。
< 142 / 197 >

この作品をシェア

pagetop