策士な御曹司は真摯に愛を乞う
すっかりパニックになっていて、普段のテンションじゃない。
そんな私に、夏芽さんもやや苦笑気味だ。
『君の会社にはよく出向くし、何度も見かけてるよ。名前は、社長から聞いた』
『え、ええっ!? そんな、畏れ多いことをっ……』
緊張のあまり真っ赤に顔を染めて、しどろもどろになる私を、彼はクスッと笑う。
『このバー、たまに来るんだ。今まで黒沢さんを見たことないけど……君も、よく来るの?』
グラスをカウンターテーブルに置いて、なんとも優美な仕草で頬杖をつく。
『いえ……私は初めてです。今日はちょっと、仕事でミスをして落ち込んでて。それで、なんとなく気分を変えたくなって……』
――ああ、そうか。
これは、夢じゃない。私の記憶だ。
去年の八月。
私は確かに、こうして夏芽さんと『出会った』。
彼は、ずっと前から私を知ってくれていた。
それを聞いて、私は嬉しさのあまり浮かれてしまった。
それほどお酒に強くもないのに、飲むピッチを上げて、激しい緊張を抑えた。
カウンターに二人で並び、お酒を傾けながら、少しずつ会話を弾ませていった。
だけど、私は酔い潰れてしまい――。
そんな私に、夏芽さんもやや苦笑気味だ。
『君の会社にはよく出向くし、何度も見かけてるよ。名前は、社長から聞いた』
『え、ええっ!? そんな、畏れ多いことをっ……』
緊張のあまり真っ赤に顔を染めて、しどろもどろになる私を、彼はクスッと笑う。
『このバー、たまに来るんだ。今まで黒沢さんを見たことないけど……君も、よく来るの?』
グラスをカウンターテーブルに置いて、なんとも優美な仕草で頬杖をつく。
『いえ……私は初めてです。今日はちょっと、仕事でミスをして落ち込んでて。それで、なんとなく気分を変えたくなって……』
――ああ、そうか。
これは、夢じゃない。私の記憶だ。
去年の八月。
私は確かに、こうして夏芽さんと『出会った』。
彼は、ずっと前から私を知ってくれていた。
それを聞いて、私は嬉しさのあまり浮かれてしまった。
それほどお酒に強くもないのに、飲むピッチを上げて、激しい緊張を抑えた。
カウンターに二人で並び、お酒を傾けながら、少しずつ会話を弾ませていった。
だけど、私は酔い潰れてしまい――。