策士な御曹司は真摯に愛を乞う
早口で言って、ペコッと頭を下げた。
再び見上げた鏑木さんは、どこか納得いかなそうな表情で、唇を真一文字に結んでいたけれど。


「……迎えに来たんだ。帰ろう」

「あっ」


言うが早いか、私の手から紙袋をさっと奪い取る。
そのまま私を追い越して、さっさと歩いて行ってしまう彼に戸惑った。


「鏑木さん! ダメです。鏑木さんはお仕事が……」

「今日は一日休暇を取っている。気にしなくていいから」

「でも……」


問答無用で反論を突っ撥ねる言い様に、私は目を泳がせる。
立ち尽くしたまま動かない私を、彼が数歩先から振り返った。


「君を、一人にしておけない」


わずかに眉根を寄せて、目を細める。


「え……?」


その表情はどこか切なげで、私の心臓がドキッと跳ね上がった。


「車で来てるから。とにかく、乗ってくれないか」


鏑木さんはそれだけ言うと、私の返事を待たずに、屋外駐車場の方に歩いて行ってしまう。


「ちょ、ちょっと待って」


ますます、意味がわからない。
でも、即席で買った下着が入った紙袋を取り上げられたままじゃ、大人しくついて行くより他なかった。
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