策士な御曹司は真摯に愛を乞う
鏑木さんが運転するベンツは、国際色豊かな赤坂の街をひた走っていた。
車窓を流れるのは、世界中で展開しているホテルグループの大型ホテルや、スタイリッシュな高層ビル。
フロントガラスの向こうに、東京タワーのてっぺんが見える。


三車線の広い国道は、観光バスや大型トラックも多く走行している。
時折派手なクラクションが響き、なんとも騒々しい。


ところが、一本逸れて脇道に入ると、意外にも緑豊かな住宅街だった。
大通りの喧騒が嘘みたいな、閑静な街並み。
赤坂周辺には、世界各国の大使館が建ち並んでいるため、外交官など、ハイソサエティな外国人居住者が多い。
文化、著名人の家も多数あり、セレブ感漂う高級住宅街。


一際高く聳えるタワーマンションの横で再び道を曲がり、鏑木さんは地下に向かうスロープに車を滑り込ませた。
地下に広がる駐車場で車を停め、居住フロア直結のエレベーターに乗り込む。


彼の部屋がある三十階まで、もちろんノンストップ。
降り立ったエレベーターホールは、どこかのランドマークタワーの展望デッキのようだった。
全面ガラス張りになっていて、東京の街並みを一望できる。


予想通り、ではあるけど、あまりにもゴージャスなマンション。
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