策士な御曹司は真摯に愛を乞う
開き直ったような、あまりの太々しさに、私の方が呆気に取られてしまった。


鏑木さんの言動が理解不能すぎて、私はかえって、彼の心が知りたくなってしまう。
私が忘れてしまった、彼との出会いから『すべて』を取り戻したくて、やるせなくて焦れる。


胸にいろんな思いを錯綜させて葛藤する私は、よほど複雑な顔をしていたんだろう。
鏑木さんは小さく息を吐いて足と腕を解くと、ゆったりしたチェアをわずかに軋ませて立ち上がった。
執務机を回り込み、


「黒沢さん、こっちにおいで。今日は比較的業務が落ち着いてるから、言いたいこと、聞くだけ聞くよ」


私の肩をポンと叩いてソファに誘い、通り過ぎる。
私は、肩越しに振り返った。
鏑木さんは、三人掛けのソファに、悠然と腰を下ろしている。


従順にはなれないけれど、言いたいことは山ほどあるから、私も大人しくソファに向かった。
彼と直角の位置にある、一人掛けのソファに浅く座る。
早速身を乗り出し、


「私、鏑木さんの言動、まったく理解できません」


『聞くだけ聞くよ』と言ってくれたから、私も少し興奮を鎮め、冷静に切り出した。
鏑木さんは黙って足を組み、先を促すように目線を流してくる。
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