策士な御曹司は真摯に愛を乞う
「でもそれは、私が、鏑木さんとの出会いからすべてを、忘れているせいだと思います。だから、思い出したい。でも、鏑木さんは教えてくれない。知っていそうな人に会うのもダメだと言われたら、どうしていいかわからないです」
切々と訴えかける私を、彼は無言で見遣っていたけれど。
「『知っていそうな人』……か」
組んだ足の上に頬杖をつき、やや忌々し気に顔を歪める。
「……多香子さんって、鏑木さんのなんですか」
彼が言い淀んだ先を拾う形で、私は思い切ってその名を口にした。
鏑木さんには想定内だったようで、眉尻一つ動かさない。
「彼女と話していた鏑木さん、らしくないほど冷たく刺々しい口調で、険悪な印象を受けました。でも、二人の態度に遠慮がないと言うか……旧知の間柄の人なんじゃないかな、って……」
話してほしくて、私は言葉を選びながら言い募った。
鏑木さんは唇を結び、黙り込んでいた。
どう答えるか思案しているのか、口元に手を遣る。
だけど。
「……許嫁だった。生まれる前からの」
観念した様子で、素っ気なく答えるのを聞いて、私は『やっぱり!』と思った。
答えは完全に予想通りだったのに、どうしてだか、私の胸はチクッと痛む。
切々と訴えかける私を、彼は無言で見遣っていたけれど。
「『知っていそうな人』……か」
組んだ足の上に頬杖をつき、やや忌々し気に顔を歪める。
「……多香子さんって、鏑木さんのなんですか」
彼が言い淀んだ先を拾う形で、私は思い切ってその名を口にした。
鏑木さんには想定内だったようで、眉尻一つ動かさない。
「彼女と話していた鏑木さん、らしくないほど冷たく刺々しい口調で、険悪な印象を受けました。でも、二人の態度に遠慮がないと言うか……旧知の間柄の人なんじゃないかな、って……」
話してほしくて、私は言葉を選びながら言い募った。
鏑木さんは唇を結び、黙り込んでいた。
どう答えるか思案しているのか、口元に手を遣る。
だけど。
「……許嫁だった。生まれる前からの」
観念した様子で、素っ気なく答えるのを聞いて、私は『やっぱり!』と思った。
答えは完全に予想通りだったのに、どうしてだか、私の胸はチクッと痛む。