策士な御曹司は真摯に愛を乞う
ということは、鏑木さんの元には、一日で二百前後の書類が回ってくる計算になる。
内容や至急度合にもよるけれど、これが毎日積み増しされていくのだ。
鏑木さんは、一日でどれだけの書類に、目を通さなきゃいけないんだろう。
こんな膨大な業量を抱えている人の補佐が私で、いいんだろうか……。
二人の会話を聞いて、クラッとしそうになった私に、男性秘書がちらりと視線を向けてきた。
鼻根でクッと眼鏡を持ち上げ、私を見据える。
その涼しげな目が、私の頭のてっぺんから足の爪先まで、まるで値踏みするように動くのを見て、私はギクッとして身を竦めた。
それに気付いた鏑木さんが、「ああ」と言いながらゆっくり立ち上がる。
「湊、紹介する。彼女は、俺の補佐に就いてもらってる黒沢美雨さん。黒沢さん、彼は俺の第一秘書の鏑木湊」
彼の紹介を受けた第一秘書の鏑木さんが、唇を結んだまま目礼する。
私も慌てて頭を下げてから、
「あの、鏑木って……」
二人に交互に視線を向け、真っ先に引っかかった疑問を口にした。
「湊は、鏑木の親族なんだ」
鏑木さんが、そう補足する。
それを受けて、第一秘書の鏑木さんが、わずかに右の口角を上げた。
内容や至急度合にもよるけれど、これが毎日積み増しされていくのだ。
鏑木さんは、一日でどれだけの書類に、目を通さなきゃいけないんだろう。
こんな膨大な業量を抱えている人の補佐が私で、いいんだろうか……。
二人の会話を聞いて、クラッとしそうになった私に、男性秘書がちらりと視線を向けてきた。
鼻根でクッと眼鏡を持ち上げ、私を見据える。
その涼しげな目が、私の頭のてっぺんから足の爪先まで、まるで値踏みするように動くのを見て、私はギクッとして身を竦めた。
それに気付いた鏑木さんが、「ああ」と言いながらゆっくり立ち上がる。
「湊、紹介する。彼女は、俺の補佐に就いてもらってる黒沢美雨さん。黒沢さん、彼は俺の第一秘書の鏑木湊」
彼の紹介を受けた第一秘書の鏑木さんが、唇を結んだまま目礼する。
私も慌てて頭を下げてから、
「あの、鏑木って……」
二人に交互に視線を向け、真っ先に引っかかった疑問を口にした。
「湊は、鏑木の親族なんだ」
鏑木さんが、そう補足する。
それを受けて、第一秘書の鏑木さんが、わずかに右の口角を上げた。