契約結婚!一発逆転マニュアル♡
ベッドに広がるサラサラで奇麗な依舞稀の髪や、細くて白い首筋を見ているだけで、そのまま埋もれたくなる。

しかし、依舞稀の望まぬことはしたくない。

気持ちを尊重するために、今まで必死に我慢してきたのだ。

ここで依舞稀との関係に亀裂を入れるわけにはいかない。

遥翔はギリギリで何とか踏みとどまることができた。

「悪かった。依舞稀を怖がらせるようなことするつもりじゃなかったんだ」

組み敷いたままそんなことを言ったところで信じてもらえないかもしれないが、遥翔は眉を寄せて依舞稀に謝った。

依舞稀を解放するにはあまりにも切なく、遥翔自身も体を起こすことができなかったのだ。

「遥翔さん、違うんです……。怖いわけじゃないんです」

遥翔と一つになることは、ついさっきまで依舞稀も望んでいたことだ。

しかし今ではすっかり怖気づいてしまっているのだ。

その理由はただ一つ。

「夫婦らしいこともしたいって……私は確かに遥翔さんを誘ってしまったけど……。それは義務じゃないし、遊びでもないから……」

営みは義務じゃない。

2人の気持ちがあってこそのことだ。

夫婦だから知るのが当然。

男と女だから欲望を満たすために。

そんな理由で愛されてもいないのに流されてしまうのが切なくてたまらないのだ。

「心が……欲しいんです」

依舞稀は祈るように口元で手を組み、キュッと目を瞑って小さく呟いた。
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