契約結婚!一発逆転マニュアル♡
『そんなことか』と思わず口にしそうになって、遥翔は慌てて口を結んだ。

遥翔の気持ちを知らない依舞稀にとって、『そんなこと』ではないのだと気付いたからだ。

もっと早くに自分から口にしていればよかった。

依舞稀の気持ちが付いて来ていなくとも、自分の気持ちだけは伝えておくべきだった。

いくら依舞稀を追いかけて結婚しても、当初の目的が契約結婚なのだから、純粋な思いが伝わるはずがないのだ。

この気持ちが本物かどうかなんて遥翔にはわからない。

今まで本気で誰かを愛したことなどないのだから、それもまた仕方ないと言えるだろう。

しかしこの言葉で言い表せない気持ちを、なんとかして伝えなければ。

「心は……」

そう呟くと、依舞稀は恐る恐る目を開け遥翔を見つめた。

遥翔はまるで本当に依舞稀を溺愛しているかのように扱ってくれる。

それが本物であるならば、依舞稀も自分の気持ちに蓋をせずに向き合って、本当の夫婦になれると思っていたのだ。

思わず抑えられなくて行動してしまったが、依舞稀の願いは一つだけ。

だからこそ、遥翔の返答次第では、今後の夫婦の在り方が変わってしまう気がするんだ。

「俺の心を、どうやったら依舞稀にやれるのかわからない。でもな、俺の心の中は、いつだって依舞稀が大半を占めてる」

依舞稀の心臓の音が大きく鳴るのと比例するように、依舞稀の目も大きく開いていく。

「自分の心が依舞稀で侵食されているのに、どうやったら依舞稀にやれるかわからない」

これは遥翔の正直な気持ちで、無意識の告白だった。
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