契約結婚!一発逆転マニュアル♡
恋愛には疎い、鈍いと言われ続けてきた依舞稀にだって、今の言葉が何を意味するのかくらいは容易に理解できた。

遥翔の心の中に自分がいる。

妻として、女として。

自分が初めて遥翔の心の中に巣食った人間だということ。

そしてそれは、遥翔が依舞稀をちゃんと想ってくれているということに他ならない。

「遥翔さん。もしかして、遥翔さんは私のことをちゃんと好きでいてくれてるってことですか?」

思い違いになどならないように。

何事にも確認が一番大切だ。

先ほどまでの恥ずかしい気持ちはどこへやら。

遥翔の気持ちを聞かせてほしくて仕方がない。

「好き……か。うん、そうだな。そう言ってもいいとは思うんだが、それとは違うような気もする。好きとか、そんな簡単な二文字で表してもいいのか悩むところだ。もっとこう、大きいというか、言葉にできない感情というか。どんな言葉でも伝えきれない。不思議な気持ちなんだ」

好きよりももっと大きくて、言葉にできないほどの想い。

遥翔が知らないその言葉の答えを、依舞稀はもちろん知っていた。

「遥翔さん。好きよりも大きくて言葉にできない気持ちを言葉にするとき、一般的に人はこういいます。『愛してる』って」

依舞稀のその言葉に、遥翔はハッとしたように目を見開いた。

依舞稀の『愛してる』という言葉が、まるで雷にでも打たれたかのように遥翔の心と身体を打った。

誰しもが言葉にできる想い。

自分は今まで一度も感じたことのなかった想い。

「そうか……。これが、愛してるってことなのか……」

遥翔は今初めてその言葉の意味と大切さを知った。
< 120 / 230 >

この作品をシェア

pagetop