契約結婚!一発逆転マニュアル♡
第四章

手駒の足音

晴れて本物の夫婦になった依舞稀と遥翔は、平穏な日々を送っている。

かに思えた。

遥翔はもう、完全に依舞稀にまいっていて、八神は多少ウンザリしていた。

事あるごとに発せられる『依舞稀』という言葉は聞き飽き、何かあればすぐに知らせろと、常に依舞稀の周辺を探らされる。

遥翔の管理と依舞稀の管理。

2人の世話を焼かなければならなくなった八神の気苦労は絶えない。

しかし遥翔も八神の仕事量の把握くらいはしているらしく、今まで任せきりであったことを、自分でこなすようになってきた。

仕事中、依舞稀のことを気に掛けてもらう代わりに、遥翔は八神を気に掛ける。

これで三人のバランスは何とか保たれているように思えた。

おかげで彩葉の不穏な動きも早々にキャッチする事ができた。

「辰巳彩葉が、依舞稀さんの身辺を探っている節があります」

「どういうことだ?詳しく話せ」

趣のあるデスクで目を通していた書類をパサリと置き、遥翔は八神の言葉に眉をしかめた。

「まだ大きな動きをしているわけではないですし、いくら私と言えども、プライベートまで辰巳に張り付くわけにもいきませんので、詳しいことはよくわかりません」

いくら有能な八神と言えども、彼は遥翔の秘書であって、探偵や警察ではない。

全てのことを把握するなんてことは到底無理な話である。

「すまん。俺もお前にそこまで強いているわけじゃない。そこまでの報告を上げてくれるだけでも感謝してるよ」

何か一つでも情報があれば、何が起きるにしても予測と覚悟ができる。

それだけでも十分だ。
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