契約結婚!一発逆転マニュアル♡
「だって遥翔さん、いつも私の時間に合わせてくれるから、申し訳ないんだもの」

確かに結婚前もクラブの仕事のために最小限の残業に留めていた依舞稀だったが、今では理由が違う。

それが少しも苦にならないのだから、本当に不思議だ。

「なにが申し訳ない、よ。プロポーズ断り続けてた時の方がよっぽど申し訳なかったでしょうよ」

けらけら笑いながら、璃世はミントの飴を二つ取り出し、一つを依舞稀に手渡した。

「それを言わないで……。よくあんなにバサバサ切り捨ててたなって、今となっては後悔してるんだから」

「まさか依舞稀が本当に桐ケ谷副社長と結婚するなんて思わなかったわよ。絶対無理とか言ってたくせにね」

「あの時は、本気で無理だって思ってたもの」

全てが自分と違う遥翔と並んでいる姿なんて、微塵も想像がつかなかった。

とてもじゃないが遥翔と釣り合うとは思っていなかったし、価値観も金銭感覚も環境も、全てが真反対の二人がこんな風に夫婦になれる未来など、描けるはずもなかった。

「でも、副社長、よく諦めなかったよね。メンタル強いわ」

「あそこまで想われちゃったら、もう選択肢ないじゃない?今ではそれが大正解だったって確信してる」

依舞稀の笑顔を見ると、今が本当に幸せなのだと察することができ、璃世は当てられたように溜息をついた。

「依舞稀見てれば十分伝わるわ。副社長も本当に依舞稀のことを大切にしてくれてるってわかる」

滅多にお目にかかることのないクールな副社長が、たまに妻の顔が見れると本当に嬉しそうに微笑むのだ。

それを見るだけで、二人が本当に幸せなのだとわかる。
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