契約結婚!一発逆転マニュアル♡
しかし璃世も一部の人間が依舞稀をよく思っていないことも知っている。

依舞稀の同期である華と瞳とランチで一緒になった時、意気投合して連絡先を交換したのだが、依舞稀にとって良くない話も耳にする。

依舞稀という人間をよく知っていて、副社長である遥翔と自分の恋愛を夢見ていない人物にとってみれば、桐ケ谷夫婦を見るのは微笑ましく思う。

しかし遥翔のスキルと顔面偏差値は半端ではない。

いくら依舞稀も美人だとはいえ、自分達と同等にホテル社員である人間が妻になるということを、決して認められないと思う人間だっている。

依舞稀もそれを身をもって体験し、解決したようだが、まだまだ女性社員に認めてもらうには時間が必要だろう。

他人には何一つ関係のないことで、依舞稀が大変な思いをするというのは解せないが、もどかしいかな璃世自身も見守り励まし支えることしかできないのだ。

「最初は不安だったけど、今なら副社長は絶対依舞稀を幸せにしてくれるって信じられる。依舞稀……よかったね」

璃世の心からの言葉に、依舞稀はふわりと微笑むと、「ありがとう」と軽く頭を下げた。

「ほら、いくら副社長がいないからって、あんまり遅くなると心配させちゃうよ?ちゃんと家に帰ったか、いつもみたいに確認メッセージ来ちゃうんじゃない?」

「そうだね。そろそろお家に帰って安心させてあげなくちゃ」

「はいはい、ごちそうさまです」

「おかわりどうですか?」

「胃もたれしたのでお断りします」

そんなふうに笑い合いながら、依舞稀は帰る準備を始めた。
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