契約結婚!一発逆転マニュアル♡
『俺と一緒に帰れないときは、危ないからタクシーで帰れよ』

結婚したばかりの頃、遥翔は依舞稀にそう言った。

自分の妻を一人で電車に乗せて、駅からマンションまで歩いて帰らせるなど、そんな危険なことはさせられないという思いからである。

贔屓目に行っても依舞稀は美人だ。

スタイルもいい。

最近の女性は細いばかりが多いが、依舞稀は細い中にも程よい弾力とハリがあり、出ていて欲しいところはしっかりと出ている。

男にとっての理想を具現化した女性だと言っても過言ではないだろう。

しかしこれはあくまでも遥翔目線であり、実際のところ皆が皆そうだとは言い切れないところではある。

しかし遥翔にとって自分の妻は最高の女性であり、依舞稀に注がれる男性の視線は全部、下心があると思っている。

完全に迷惑な男だ。

しかしそんな遥翔の鬱陶しい気持ちも、今の依舞稀からすれば嬉しいことだ。

ホテルを出る前に心配そうな表情の遥翔が脳裏に浮かび、思わずクスリと笑ってしまった。

遥翔の言う通りタクシーを呼んだ方がいいのか。

ふと考えた依舞稀だったが、今すぐ岐路につけるのも関わらず、タクシーを呼んでしまったら、到着するまで待たねばならない。

その時間のロスを思えば、久々に電車を利用するのもいいかもしれないと思い立った。

結婚する前は毎日のように利用していた駅まで歩くというのも懐かしい。

遥翔のマンションの最寄り駅で降りるのは初めてだが、今後のことも考えて少しは慣れていきたい。

これからは自分自身の最寄り駅にもなるのだから。

そう考えて、依舞稀は電車を使用することを選択して駅まで歩き始めた。
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