契約結婚!一発逆転マニュアル♡
日村光星。

依舞稀の幼なじみではあるが、依舞稀の中ではもう完全に存在を抹消していた。

一度も思い出しもしなかった男が、どうして今ここにいるのだろうか。

「依舞稀……会いたかったよ」

柔らかく微笑みながら依舞稀の手をきゅっと握るが、依舞稀は力いっぱい振り払った。

「どうしてここにいるの……?」

光星から距離を取り、依舞稀は身を縮めて睨みつけた。

遥翔と結婚する前に住んでいた場所ならば、光星も知っていたかもしれない。

しかしここの場所は誰にも知られているはずがないのだ。

「そんな怖い顔しないでよ。大丈夫だから」

「大丈夫なわけないでしょっ!」

自分の住む場所を、無関係の人間に勝手に探られているかもしれないと考えると、大丈夫だと安心できるわけがない。

正直にいって、気持ちが悪いとしか言いようがないのだ。

「私がここにいること、どうしてあなたが知ってるの?誰に聞いたのよ!今さらどうして私の前に現れるの?」

特別な感情など一度も抱いたことなどなかったが、さすがに不快で仕方がない。

依舞稀は嫌悪感を露わに、光星を責め立てた。

「落ち着いて!僕は依舞稀のために来たんだよ」

「あなたが私の為になることなんて、何一つないっ!」

「依舞稀!とにかく話をしよう」

光星が依舞稀との距離を詰めようと踏み出した時。

「なにをしてるんですかっ!!」

マンションから大きな声が上がり、初老の男性がこちらに走ってくるのが見えた。

その男性は、いつもマンションに常駐しているコンシェルジュであった。

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