契約結婚!一発逆転マニュアル♡
「暫くは昼夜問わずにお一人で出歩かないことをお勧めします」

さっきの男がストーカーであるかどうかは知るところではないが、回避できる危険は回避するに限る。

「できれば旦那様に相談された方がよろしいかと思います」

イケメンだ金持ちだと、マンション住人の女性の間でも噂になっているこの部屋の主。

美男美女の新婚夫婦にストーカー問題とは、なかなか言いにくいことではあるだろうが。

「このことは口外いたしませんので、ご安心ください。では失礼します」

干渉せず多くは語らない。

これがコンシェルジュの鉄則だ。

頭を下げてその場をさるコンシェルジュに、「ありがとうございました!」と依舞稀は近所迷惑にならない程度に声を張りお礼を言った。

玄関のドアを閉め、しっかりと施錠し、リビングのソファーに依舞稀はぐったりと腰を下ろした。

光星と何があったわけでもない。

一方的に好意は持たれていたけれど、付き合っていたわけでもないし、彼がこんな行動に出る意味がわからない。

依舞稀が遥翔と結婚していることを知ってのことだったのか。

どうしてこの場所を知っているのか。

自分で調べて突き止めたものなのか。

それとも人伝に聞いたものなのか。

だとすればその人物は誰なのか。

何のためなのか。

今日のことで諦めてくれるのかどうなのか。

考えれば考えるほど深みにはまっていく。

ただ一つ思うことは、素直に遥翔の言う通りにタクシーを使って帰宅すればよかったということだけだ。

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