契約結婚!一発逆転マニュアル♡
シャワーを浴びて身体を綺麗にしても、光星から握られた手の感触はなかなか消えない。

昔はこんなに光星の感触を不快に感じることはなかった。

確かに恋愛感情は微塵もなかったし、正直なところ人としても大した興味がない。

そうはいったものの、光星を嫌っているわけでは決してなかった。

呆れるほど真っ直ぐに向けられる好意もサラリと流せる程度であったし、光星自身も依舞稀に迷惑の掛かるようなことをしたことはなかったからだ。

依舞稀から離れて言った時でさえ、光星の人生を考えれば当然のことだと思ったし、至極当然のことだと割り切れた。

しかし今日の光星は何故だか受け入れることができなかった。

思うところがある以前に、決して相容れない何かを感じたからかもしれない。

あと数時間で遥翔が帰ってくるだろう。

問題は遥翔に光星のことを報告するかどうかだ。

本当ならば報告するべきなのだろうということは、依舞稀とてわかってはいる。

しかしこれを報告したところで、誰が得をするのだろうか。

下手をすれば遥翔によって警察に通報されてしまうかもしれない。

そうなれば光星はどうなってしまうのだろう。

そもそも事件にも発展していないこんなことで、警察は動くものなのかはわからない。

依舞稀に関して言えば、確実に独り歩きを禁止されてしまうだろう。

昼夜問わずに常に遥翔に心配され管理され、自分の時間など間違いなくなくなってしまうに違いない。

下手をすればホテル内であっても八神に監視させてしまうかもしれない。

そして何より、光星のことを聞いた遥翔が面白いわけがない。

拒絶や否定に弱い光星の性格上、これ以上大きなことをしてくるとは考えにくい。

トータル的なことも考えて、今回は口を噤むことにした。
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