契約結婚!一発逆転マニュアル♡
依舞稀のスマホに遥翔からの連絡が入ったのは、19時を過ぎた頃だった。

『悪い。会議が長引いて連絡できなかったんだ』

焦った口調の遥翔の声に、自然とどんな表情をしているのかがわかる。

これが夫婦というものなのだろうか。

まだ夫婦になって日も浅いというのに、依舞稀は頬を緩ませた。

「大丈夫ですよ。私も企画書仕上げてたので。遅くなるようだったら先に帰ってましょうか?」

ふっと昨晩の光景が頭を過ったが、さすがに警察を呼ぶと言われたにもかかわらず、二日続けて待ち伏せなどはしないだろう。

それに依舞稀も同じ過ちはしない。

さすがに学習したので、勿体ないがタクシーで帰るつもりだ。

『いや、二日も一緒に帰れないのはちょっと……』

「朝は一緒だったんだから大丈夫ですよ。私ももう少しで企画書上がるんで、それから帰ります」

『ごめんな?俺もさっさと終わらせるから。電車じゃなくて、ちゃんと……』

「タクシーで帰ります」

遥翔が言い終わらないうちに、依舞稀は遮るようにそう言って笑った。

心配性の旦那様が愛しくて可愛らしくて。

大切にされているという大きな実感が胸いっぱいに広がった。

通話を終えスマホをデスクに伏せると、軽く腕まくりをしてPCのキーを弾いていく。

自分の納得する企画書が完成したのは、遥翔との電話を切って一時間半後であった。
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