契約結婚！一発逆転マニュアル♡
しかし依舞稀の正論はあくまでも依舞稀のものであって、光星には光星の正論というものが存在する。

「依舞稀、昨日も言ったと思うけど、僕は依舞稀のためにここに来たんだよ？」

ゆっくり一歩ずつ依舞稀との距離を詰めていく光星から、逃げようと思えば逃げられたのだ。

しかし根本的な解決にはならない。

光星がどうして今さら自分の前に現れてこんな行動に出ているのか、依舞稀は知らねばならないと思ったのだ。

光星が手を伸ばしても依舞稀に触れることができないギリギリの距離で、「話は聞くからそれ以上近付かないで」と少し声を荒げた。

光星はピタリと足を止める。

依舞稀のために来たというのに、また依舞稀に拒絶されたら意味がないのだ。

「依舞稀が結婚したって聞いたよ」

「誰に聞いたの？」

「依舞稀の知り合いだって言ってたけど、何も聞いてないの？」

「知らないわ」

頭を巡らせてみたけれど、遥翔との結婚を知っていて、尚且つ光星を知っている人間など一人も存在しない。

光星から離れたあの日から、一度も光星のことなど思い出したこともなかった依舞稀が、他の人間に光星のことを話すなんて絶対に有り得ないのだ。

誰がどこで光星のことを探し当てたのか、全く思い当たる人物がいない。

「依舞稀が抱えてしまった負債の肩代わりの対価として、無理やり結婚させられたって聞いたよ。僕なりに調べてみたら、本当にあの家は完済されてた」

「無理やり……」

やはり確実におかしい。
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