契約結婚!一発逆転マニュアル♡
執念深そうな彩葉のことだ。

依舞稀のことを根に持ってこんなことをしでかしたに違いない。

しかしどんなに依舞稀を毛嫌いしているとはいえ、ここまでのことをするとは思ってもみなかった。

自分の過去を探られ、光星を利用し、一体彼女は何を望んでいるのだろうか。

今さら彩葉が依舞稀の立場にとって代われることなどないというのに。

「依舞稀、今なら僕らの間には何の障害もないんだ。普通の生活ができる。一緒に逃げよう。離婚手続きは後でなんとでもしてあげる。とりあえず今は僕とどこかに……」

「うるさいなぁ、もう」

これ以上光星の言葉は聞きたくない。

依舞稀は光星を思いっきり睨みつけた。

「さっきからペラペラペラペラなに一人で喋ってるの?」

今までに出したことのないような低く響いた依舞稀の声に、光星はたじろいだ。

「誰に何を聞かされたのかなんてわからないけど、私が今まで貴方に助けを求めたことなんてあった?」

小学生の頃、男の子にいじめられた時も、中学生の時に進路に悩んだ時も、高校の時に挫折を味わった時も、突如両親が他界した時も、多額の負債を抱えて途方に暮れた時も。

「どんな時でも私は貴方に助けてほしいなんて、一度たりとも思ったことはないわ」

光星に対し最初に抱いた恐怖はどこへやら、依舞稀はずいっと光星との距離を詰めて指を突き付けた。
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