契約結婚!一発逆転マニュアル♡
そうは言っても、彼とて依舞稀の三つ年上で27歳になるわけで。

いい加減に彼独自の空気感が全てだと思ってもらっては困る。

そろそろ成長せねばならないのだ。

「そんな怖い顔しないでくれよ……」

初めて見る表情の依舞稀に、すっかり始めの勢いをなくしてしまっている光星は、しゅんと肩をすぼめた。

「私が光星を必要としていないことはわかったでしょう?これ以上は迷惑だから帰って」

もう何も話すことはない。

光星は依舞稀にとって、今後一切関わり合うことのない人間なのだから。

「依舞稀が僕の助けを必要としてないことは理解できた。でもそれと結婚は別の話だろう?」

「別じゃないわ。同じ話よ」

どうにかして食い下がりたいのかもしれないが、依舞稀の人生に光星は必要ないのだ。

これ以上光星を深く傷付ける前に引き下がってほしい。

「負債の肩代わりをする代わりに依舞稀に結婚を要求するなんて間違ってる。そんな愛のない結婚で依舞稀が幸せになれるはずがないじゃないか」

「愛のない結婚かどうかなんて、他人が勝手に決めつけないで」

依舞稀のことを愛ですぎて、かなり鬱陶しかったのは事実だが、それでも幼い頃から一緒に過ごしてきた幼なじみだ。

ハッキリと絶縁の言葉を口にしたくはないといのに。

「こんな状況で決めつけるも何もないだろう?いきなり結婚して、途端に負債額が完済してたとなれば、相手は依舞稀を手に入れるために卑怯な取引をした。そう思うに決まってるじゃないか」

光星の言葉を聞くや否や、依舞稀の頭でプツンと何かが切れる音がした。
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