契約結婚!一発逆転マニュアル♡
「誰が卑怯だって……?」

依舞稀自身、自分がこんなに凄みのあり声を出せるとは思ってもみなかった。

足元から震え響くような声に、光星は顔をひきつらせた。

「依舞稀……?」

ここ数年は離れていたが、依舞稀が生まれてからずっと、一緒に育ってきた。

依舞稀はどんなに怒っても、最終的には人を許せる慈悲深いマリア様のような女性のはずなのだ。

「誰に向かって卑怯だなんて言ってるのよ」

素直に帰っていればよかったものを。

遥翔を卑怯者呼ばわりしたからには、もう無傷で帰すことなどできなくなってしまった。

「あれだけ私のことを好きだなんだって言っておきながら、多額の負債が降りかかった途端に態度を急変させた男が何言ってんの?」

自分に火の粉が降りかかる前に逃げ出そうとした男が、遥翔の何を知ってこんな偉そうに助けるなどと言っているのだ。

冗談は存在だけにしてもらいたい。

「今まで音沙汰もなかったくせに、私の負債がなくなったことを確認した途端に現れて。一体何なの?どこまで自分に酔ってるわけ?」

彩葉から完済のことを聞いてこの男はすぐに調べたに違いない。

弁護士から初めて負債の話を聞いたとき、光星も隣にいたのだから、あっさりと情報が漏れたのだろう。

だから光星は今頃になって自分の前に姿を現したのだ。

今なら自分にとって不利益なことは何一つないのだから。

昔の依舞稀ならば、いくら自分の大切な人を悪く言われたからと言って、ここまでの反撃はしなかっただろう。
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