契約結婚!一発逆転マニュアル♡
『やってしまえ』と簡単に言われてしまったけれど、実際のところは何をどうしていいのかいまいちわからない。

わからないとは言っても、このまま泣き寝入りするのも絶対に嫌だ。

中途半端な反撃はまた面倒を引き起こしかねない。

依舞稀はその日一日全く業務に集中できずに、彩葉への対抗策を頭の中で考えていた。

結局その日、依舞稀が彩葉と対峙することはできなかった。

帰宅してから遥翔に『やってやったのか』と聞かれたけれど、依舞稀は頭の中で整理がついてないことを告げた。

悪役になれない依舞稀のために、自分はいつでも出る準備があると背中を押した。

今後も遥翔の妻であることに対してよく思わない人間と出会うこともあるかも知れない。

そんな時でも堂々と胸を張って自分の横に立っていて欲しいと思う。

だからこそ敢えて自分が決着を付けるとは言わなかったのだ。

明日こそ。

依舞稀はそう心に決めて、遥翔の腕の中で眠りについた。

翌朝、依舞稀と遥翔が出勤すると、八神がすでに駐車場で待機していた。

「どうした?こんなところまで出迎えとは珍しいな」

遥翔の車が駐車場に入ってくるなり八神が駆け寄ってきたので、遥翔は日課である依舞稀とのキスができず、かなり不満顔でそう言った。

「少々面倒なことになってます」

八神が眉間にしわを寄せてそう言って依舞稀を見た。

「借金や副業も含めた過去が、社内メールで一斉送信されています」

「なんだと?」

「新規アドレスからの送信なので出所はわかりませんが、間違いなく彼女でしょう」

「それしか考えられないな」

淡々と業務連絡のように交わされる会話を、依舞稀は呆然として聞くことしかできなかった。
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