契約結婚!一発逆転マニュアル♡
あまりにも強気な遥翔の一言に、辰巳はグッと眉を寄せた。

「どういう意味ですかな?」

こっちが2人を追い込むつもりが、どうして自分が追い込まれているような感覚に陥らなければならないのだろう。

「私はこのホテルの専務ですよ?緒方さんのスキャンダルは今や副社長のスキャンダルも同然です。このままだと立場がなくなってしまうのは副社長の方です。ですからこうやって早急に対策を打つべく伺ったというのに」

甚だ侵害だというようにわざとらしく溜め息をついた辰巳を見て、依舞稀はどうしても黙っていられなくなってしまった。

「お言葉ですが、どうしてこうなったのか、専務はご存じないんですか?」

自分の娘のしたことを、この男は一つも理解していないのだろうか。

もしそうなら、この男は専務としてどころか父親として失格である。

そう非難する視線を辰巳に投げかけると、それが辰巳には気に入らなかったのだろう。

「君は黙っていなさい」

お前と話すことなど何もないというかのように、辰巳は依舞稀の言葉を一刀両断した。

「もとはと言えば、キミが原因じゃないか。キミは私に意見できる立場かね」

副社長の嫁でなければ、自分と話せる立場にもいなかったはずの女だ。

辰巳は依舞稀などとは関わりたくないと言いたげに、露骨に顔を歪める。

間違いなく辰巳からは嫌われていると思ってはいたが、まさかここまでとは。

想像を大きく凌駕した辰巳の敵意に、依舞稀はこれから投げかける予定の辰巳への言葉に抵抗をなくした。
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