契約結婚!一発逆転マニュアル♡
誰がこのメールを送信したか。

辰巳にとってそんなことは大した問題ではなかった。

自分にこの事を話した娘が、他の誰にも話していないとは限らない。

そういう疑念も頭にはあった。

「何も知らないとすれば、ずいぶんとおめでたいものですね」

「なんだと?」

依舞稀にそう威嚇してみたものの、父親だけに有力な情報を提供するような信頼関係を築いていないことは事実だ。

「この情報を流したのは、辰巳専務のお嬢さん。辰巳彩葉です」

「…………」

やはりそうだったか。

辰巳はグッと言葉を飲み込んだ。

それであったとしても、この状況が変わるわけではない。

この女を排除するのに、出どころがどこであろうが大した問題はないと考えたのだ。

「きっと後先考えずに行動したんでしょうね。いったい今まで何を学んできたんだか」

依舞稀は大袈裟に溜息をついてみせた。

辰巳の顔色が変わらないということは、彼自身、頭が悪いということだ。

先を見通す能力が乏しいということだからだ。

すなわち無能。

「私に対する攻撃が、私だけのものではなくなり、自分が窮地に陥ることになるという考えには及ばなかったんですもの。本当に愚かです」

こんなことを暴露したところで、遥翔が黙認するはずがないではないか。

本当に揃ってバカ親子。
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