契約結婚!一発逆転マニュアル♡
人の気持ちはどう足搔いたところで他人にわかるはずもない。

依舞稀に対する愛情は、若干異常ともいえるのではないかと自分でもわかってはいる。

いかに遥翔と言えども、自分と同じように異常なまでに愛してほしいとは考えていない。

今でも依舞稀は十分なほどに遥翔を愛しているし、それは惜しみなく伝わっている。

さすがの遥翔もその気持ちがわからないほどの馬鹿ではない。

けれどその異常な愛ゆえに、ほんの些細な言葉で不安を覚えることもあるということを初めて知った。

そのしょうもない男が、今の遥翔なのである。

何の根拠もない癖に恐ろしいほどに自信を持っていた、あの頃の遥翔はいったいどこに消えてしまったのだろうか。

自分で必死に探したくなるほど、依舞稀のことに関してだけは酷く臆病で不安になるのだ。

これが愛の醍醐味であると言われてしまえば、なるほどなと納得してしまうほどの初心者ではあるが。

「俺はいったいどうすれば満足できるんだ……」

毎回呟かれる遥翔の独り言を聞かされている八神にとってみれば、本当にたまったものじゃない。

「もういい加減にしてくださいよ……」

さすがの有能な八神も、とうとう頭を抱えてしまった。

こんなしょうもない悩みのせいで仕事を疎かにするようであれば、八神も強く言えるのだが。

なにせそこは完璧にこなしてしまう男であるから堪らない。

もうアレしかない。

八神の頭の中にはそれしか浮かばなかった……。
< 196 / 230 >

この作品をシェア

pagetop