契約結婚!一発逆転マニュアル♡
依舞稀が八神からのメールに気が付いたのは、定時ギリギリの時間であった。

職場のPCのメールを帰る前に確認していると、要件も入力されていない八神からのメールを見つけたのだ。

『副社長がいないところで話がしたい。終業後、執務室に来ていただきたい』

というような内容だった。

遥翔がいないところでの話というのが無性に気になった依舞稀は、必要な仕事を猛スピードで片付ける。

遥翔に何かあったのではないか。

遥翔の耳には入れたくない何かがあるのではないか。

自分のせいで、また遥翔に迷惑が掛かっているのではないか。

考え出すとキリがないほど、悪いことばかりが浮かんでしまう。

遥翔の命でここまで依舞稀を迎えに来たことは何度もあるが、八神の意志で依舞稀にメールを送ってまで遥翔に内緒でなど、今まで一度としてなかったことだ。

不審に思っても仕方がないだろう。

『今からお伺いします』

依舞稀がそう返信すると、すぐに『よろしくお願いします』と帰って来た。

このレスポンスの速さからするに、八神は自分を今か今かと待っているに違いない。

さっさとデスクを片付けて荷物を手にすると、他の社員達に声を掛けて依舞稀フロアを出た。

エレベーターに乗り込み執務室に向かいながら、「ん?」と依舞稀は首を傾げた。
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