契約結婚!一発逆転マニュアル♡
「私は人としてあなたに惹かれています」

「八神さん……?」

惹かれていると言いながらも、八神の瞳からは熱い熱が伝わってこない。

『人として』と前置きしたことも引っかかる。

「もしかして八神さんは……」

私の気持ちを試しているのかもしれない。

それしか考えられなかった。

遥翔の性格から言って、八神に依舞稀の気持ちを確認してくれと頼むことはまずないだろう。

ということは、依舞稀の気持ちを確認しなければならない何かがあったということだろうか。

依舞稀は様々な確認原因を脳内で検索してみた。

しかし依舞稀が正解に辿り着くことはないだろう。

遥翔の依舞稀への気持ちが面倒くさくて、遥翔を無理やり副社長室に閉じ込め内線を繋いでいるなど。

そして八神の言った『惹かれている』という言葉が、あながち間違いではないということも。

「八神さんが私からどんな言葉を引き出そうとしてらっしゃるのかは分かりません。八神さんの言葉の意図がわからない以上、どの言葉が正解かもわかりません。ですから私の素直な気持ちを言葉にしますね」

依舞稀がそう言うと、八神は苦笑した。

「誰がどんな気持ちを私にぶつけてきてくれたとしても、私の気持ちは決まっています」

これだけはしっかりと伝えておこう。

今の自分にとってはこの気持ちが全てなのだから。

依舞稀は姿勢を正すと真っ直ぐに八神を見つめた。

「私は遥翔さんを愛しています。遥翔さん以外愛することはできません」

それが依舞稀の素直な想いだ。

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